時幾分かの急行の出る少し前だった。
私服は汽車の出るのを見送って引っ返したようだった。
マルセイユの警察へは僕の出発と到着との時刻を電報してあるからと言うのと、生じっか立寄ってまた迷惑をかけてもと思って、リヨンには寄らずに、翌朝マルセイユに着いた。が、マルセイユでは、別に制服も私服も迎いに出ているような様子はなかった。
僕は宿をとるとすぐ、領事館へ行った。領事の菅君はまだ新任早々で、一週間ばかり前までは杉村君の下に働いていたのだった。
菅君はマルセイユの警察へ行って、第一の船で出帆するという命令のその「第一」というのを日本船のと念を押して来、また郵船の支店へ行って旅券なしで切符を買える談判をして来て、ちょうどそれから一週間目に出る箱根丸で日本へ帰る都合をつけてくれた。
僕はその間にうちへも電報を打ち、パリやリヨンの友人等にも電報や手紙を出して、その日までに立てる準備をした。そして僕が何の心置きもなく安心してその準備に取りかかれたのは、僕の友人や同志が誰一人僕のまき添えとしての迷惑を大して受けていなかったことだ。
即刻追放というんで、パリではあんなに厳重だったのだから、ここ
前へ
次へ
全159ページ中127ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
大杉 栄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング