≠オて、いろいろ判事と懇談の末、保釈は却下されることとなってその代りすぐ公判を開くことに話がついた。
公判は、予審の調べから一週間目の、五月二十三日に開かれた。
十四、五人の被告がボックスの中に待っている間に、傍聴人がぞろぞろと詰めかけて、やがてリンの響きとともに、よぼよぼのお爺さん判事が三人とそのあとへ検事とがはいって来た。
裁判官等のうしろの壁には、正義の女神の立像が、白く浮きぼりに立っていた。
裁判長はすぐそばにいる僕等にすらもよく聞きとれないような、歯なしのせいのただ口をもぐもぐするような口調ですぐ裁判を始めた。
「お前はいつ幾日どことかで何とかしたな。……よろしい。それでは……」
とちょっと検事の方を向いて、そのうなずくのを見ると、こんどは両方の判事に何か一こと二こと言って、
「それでは、禁錮幾カ月、罰金いくら。その次は何の誰……」
というような調子で、一瀉千里の勢いで即決して行く。
僕の番は六、七人目に来たが、やはりそれと同じことだった。
「お前はいつ幾日か、にせの旅券とにせの名前でフランスにはいったに相違ないな。」
「そうです。」
「それについて別に何か言う
前へ
次へ
全159ページ中114ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
大杉 栄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング