アとはないか。」
「何にもありません。」
「それじゃその事実を全部認めるんだな。」
「そうです。」
それで問答はおしまいだ。検事は何も言うことがないと見えて、黙って裁判長にうなずいた。
そして弁護士が二十分ばかりそのお得意の雄弁をふるったあとで、
「よろしい。禁錮三週間。罰金いくらいくら。次は何の誰……」
裁判長がそう判決を言い渡すと、僕等のうしろに立っていた巡査の一人が、さあ行こうと言って一緒にそとへ連れて出た。
フランスでは、未決拘留の日数は三日間をのぞいたあとをすべて通算する。で、僕はその日に満期となって、翌日は放免の訳だ。
あっけのないことおびただしい。
裁判所の下の仮監では、この日同じ法廷で裁判される四、五人の男と一緒にいた。
裁判の始まるのを待つ間、みんなガヤガヤと自分の事件についての話をしあっていた。実はこうこうなんだが、そこをこう言ってうまく逃げてやろうと思うんだとか。いや、実につまらん目にあいましてな、こうこう言うつもりのがついこんなことになってしまいましてとか。なあに、そんなことなら何でもない、せいぜい三月か四月だとか。話は日本の裁判所の仮監のとちっ
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