「うよりもむしろ、大部分は判事と弁護士との懇談のようなものだった。
警視庁からの罪名書きには、暴力で警官に抵抗したという官吏抗拒罪や、秩序紊乱罪や、旅券規則違反罪や、浮浪罪などといういろんな出たらめが並べてあったが、予審判事はその中の旅券規則違反についてのことだけしか尋ねなかった。そうする方が一番面倒もなかったのだろう。
そしてどこからどう聞いて来たか、あなたのお父さんは陸軍大佐だったそうですね、といったようなことを大ぶ丁寧に聞いた。実は少佐なのだが、せっかくそんなに大佐をありがたがっているものならそう思わして置けと思って、僕もそうですとすまして答えた。その他にも、もと相当な社会主義者で東洋方面の社会運動に詳しい、そして今は保守党の『レクレエル』という日刊新聞の主筆になっている何とかいう男が、僕のことを大ぶえらい学者ででもあるかのようにその新聞で書き立てたそうなので、判事も大ぶ敬意を払っていたのだそうだ。
最初弁護士の話では、裁判所側はリヨンの方やその他いろんな方面を取調べなければならんので、公判までにはまだ一、二カ月かかるだろうということだったが、予審の日に弁護士が保釈を請
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