のあなたとは違う、ということだけを思っています。そして保子さんに対するあなたは認めて尊敬しますけれども、保子さんがあなたに対する自分をもう少し確かにしてあなたを理解して下されば、私は心から保子さんを尊敬することができるだろうと思います。けれども、それが保子さんにできないからといって、私は保子さんを馬鹿にしたり軽蔑したりするほどあなたを無理解ではいないことを申して置きます。どうぞ保子さんにできるだけよくして上げて下さいという私の言葉を真直ぐに受け入れて下さい。これは何の感情もまじえない私の本当の言葉であることをあなたは認めて下さるでしょう。
「そして私が自身でさえも驚くほどのところまで進み得たということを、私と一緒にきっとよろこんで下さることと信じます。この気持は、しかし、たぶん私のあなた以外の誰にも、本当には理解できない気持ではないでしょうか。本当に私は、あなたに、この強情な盲目な私をこんなところにまで引っぱって来て頂いたことを、何と感謝(いやな言葉ですけれども)していいか分りません。何だか私のこれからの道が、明るく、はっきり開けて来たように思われます。」

         三


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