セ、何にもあなたにそんなことは、お聞きしませんから分りませんけれど、またそうでなければそれ以上に仕方はありませんが。
「あなたが神近さんに対して、また私に対して、さしのべて下すった同じ手を、保子さんにもおのばしになることを望みます。私は神近さんに対して相当の尊敬も愛も持ち得ると信じます。同じ親しみを保子さんにも持ちたいと思います。保子さんは私に会って下さらないでしょうか。私は何だかしきりに会いたい気がします。あなたの一昨日のお話しのように、触れるところまで触れて見たい気がします。私も保子さんを知りませんし、保子さんもたぶんよく私というものをご存じではないだろうと思います。触れるところまで触れて、それでも私の真実が分らなければ仕方はありません。けれども、知らないでこんなにしているのは少し不満足な気がします。もっとも保子さんが私に持っていらっしゃるプレジュディスはかなり根深いものであるかも知れませんけれども、この私のシンセリティとそれとがどちらが力強いものであるかを見たい気も致します。もし保子さんが、お許し下さるなら、私はこんどお目に懸りたいと思います。
「けれどもまた、もしその結果が保子
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