いたんだがね。首をつって仕方がないんで、とうとうこっちへ移されちゃったんだ。それで、夜じゅう、ああして手錠をはめられて、からだが利かないようにされてるんだよ。」
こうして、夜になると手錠をはめられ、朝になるとそれをはずされて、それが幾日も、幾日も、たしか二、三カ月は続いたかと思う。僕はその男が何で自殺しようとしたのか、その理由は知らなかった。ただ、もう三度も四度も、五度も六度も、首をつりかけたりあるいはすでにつっていたりするのを発見された、ということだけを聞いた。
そしてある晩、その男が両手を後ろにして帯のところで手錠をはめられているのを見て、どうしてあんな風をして寝られるだろうと思って、試みに僕も手拭で苦心して両手を後ろでくくりつけて寝て見た。初めはからだを横にして寝て見たが、肩や腕が痛くて堪らんので、こんどはうつ伏せになった。しかしそれではなお苦しいので、またからだを前とは反対に横にした。こうして一晩じゅう転輾して見ようかとも思ったが、どうしても堪えられないで、すぐに手拭を解いてしまった。
それから、これは僕等のとは違う建物にいた男だが、湯へ往復する道で、やはり手錠をはめて、
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