足枷までもはめて、そして重い分銅のようなものを鎖で引きずって歩いているのによく出食わした。
 その男もやはり二十五、六の、細面の、どちらかと言えば優男であった。
 分銅のようないわゆるダ(漢字を忘れた)という奴を引きずって歩かせる、という徴罰のあることは、かねて聞いていた。かつて幼年学校時代に、陸軍監獄の参観に行って、そのダの実物を見たこともあった。しかし、それともう一つの、何でも革具で、ハンドルを廻すとそれがぎゅうぎゅうからだを締めつけるという、そして二、三分もそれを続けるとどんな男でも真蒼になってしまうというのは、今ではもうほとんど使わないということは、その時にも聞いた。
 しかるに今、そのダを引きずっているのを、眼の前に見るのだ。その男は、一列になった大勢の一番あとに、両足を引きずるようにして、のろのろというよりもむしろようやく足を運んで行った。が、その足の運びかたよりも、さらに見るに堪えなかったのは、その気味の悪いほど蒼ざめた顔の色と、やはり同じように蒼ざめた痩せ細ったその手足とであった。
 どんな悪いことをしてこんな懲罰を食っているのか、またいつからこんな目に遭っているのか、
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