は吾々の墳墓の上に栄えるのだ。」
吾々も矢張り云おう。諸君は民衆芸術を欲するのか。然らば、先ず民衆其者を持つ事から始めよ。其の芸術を娯《たの》しむ事の出来る自由な精神を持っている民衆を。容赦のない労働や貧窮に蹂みにじられないひまのある民衆を。有らゆる迷信や、右党若しくは左党の狂信に惑わされない民衆を。自分の主人たる、そして、目下行われつつある闘争の勝利者たる民衆を。ファウストは云った。
「始めに行為あり」と、
斯くしてロメン・ロオランは、其の民衆芸術の当然の結論として、芸術的運動と共に、と云うよりも寧ろそれに先だって、社会的運動に従わなければならないと断言した。
然るに、飜《ひるがえ》って我が日本での民衆芸術論者を見るに、此の点に於て果してどれ程の用意があり又覚悟があるか。少なくとも又、果して此の点に考え及んだ事すらあるか。
猶ロメン・ロオランは、其の民衆芸術論を労働運動論で結んでいると共に、其の芸術論をも生活論で終らせている。彼れは云う。
「私は劇が好きだ。劇は多くの人々を同じ情緒の下に置いて友愛的に結合させる。劇は、皆んなが其の詩人の想像の中に活動と熱情とを飲みに来る事の出
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