の如き作物は、民衆の為めには、有益と云うよりも却って気落ちさせるものである。要するに、此の「暗の力」や又は「織工」の如き作物は、貧窮の長い絶叫か若しくは悲嘆話しで、其の杞憂や絶望は、既に余りに生活の為めに苦しめられている貧民に元気をつけるとか慰安を与えるとかと云うよりも、寧ろ富者の良心を覚醒させる為めのものである。或いは又、せいぜい、貧民の中の少数の、選ばれた人々の為めのものである。
七
しかし、此の主として「民衆の為めの」芸術が民衆に享楽されるようになるには、又彼の本当に「民衆の」芸術が生れるようになるには、先ず其の「民衆」が必要である。
「嘗つて」とイタリイの革命家マジニイは云った。当時彼れはまだ若くて、其の生涯を文学に貢献するつもりでいたのだ。「嘗つて私は斯う思った。芸術がある為めには、先ず国民が無ければならないと。当時のイタリイには其のいずれもなかったのだ。祖国もなく自由もない吾々は芸術を持つ事も出来なかった。されば吾々は先ず、『吾々は祖国を持つ事が出来るだろうか』と云う問題に献身して、此の祖国を建設する事に努めなければならなかったのだ。斯くてイタリイの芸術
前へ
次へ
全27ページ中23ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
大杉 栄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング