う一つは、此の仕合な兄弟に見棄てられて、其の貧困のどん底に蠢《うごめ》いているものである。紳士閥の政策は、此の後者を絶滅させ、前者を同化させる事にある。そして吾々自身の政策は、即ち吾々の芸術的であると共に社会的な理想は、此の二種の民衆を融合させて、民衆自体に其の階級的自覚を与える事にある。
若し民衆が第二の紳士閥となって、それと同じように其の享楽は粗雑であり、其の道徳は偽善であり、そして紳士閥と同じような愚鈍な無感覚なものになるのなら、吾々はもう民衆の事などを心配しない。声ばかり高くて空っぽな芸術や、屍骸のような人類を生き延びさす事は、吾々にはどうでもいい事なのだ。
しかし吾々は民衆の若い生命力を信ずるものである。又、人類の道徳的及び社会的の革命を信ずるものである。
此の民衆芸術に対する吾々の信仰、即ちパリの遊人等の惰弱なお上品に対して、集合的生活を表明し種族の更生を準備し促進する頑丈な男性的の芸術を建設せんとする、此の熱烈な信仰は、吾々の青年時代の最も純潔な且つ最も健全な力の一つであった。吾々は決して此の信仰を失わない。
六
ロメン・ロオランの民衆芸術論の要
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