詩人にも旧い道を去らせて、諸君をして紳士閥生活の狭い範囲から、吾々が今奮闘努力しつつある此の崇高な時代に相応しい、もっと、高貴な劇に移らせようとしている。なぜなら、独り大きな題目のみが人間の奥深い臓腑を揺り動かす事の出来るものである。今、現実其者が詩になっている。そして人々が人類の大利益たる主権と自由との為めに闘っている。此の厳粛な時期に際して、芸術も亦、鬼神を喚び起す其の劇の上に、更に大胆な飛躍を試みる事が出来るのだ。芸術は此の飛躍を試みる事が出来るばかりではない。此の実生活の劇の前に赤恥をかいて消えて失くなる事を望まないならば、是非ともそれを試みなければならないのだ。」
若し芸術が此の時代に応ずる事が出来なければ、芸術は、少なくとも生きた芸術は消滅しなければならない。又、此の新芸術を創る事の出来ない民衆は、其の新勃興階級たる運命をも放棄しなければならない。斯くして民衆芸術の問題は、民衆にとっても亦芸術にとっても、実に死ぬか生きるかの問題である。
民衆にも二種の民衆がある。其の一つは、貧窮から遁《のが》れ出て、直ちに紳士閥に心を惹《ひ》かれ、紳士閥に吸収されて了ったものである。も
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