や、旧社会は其の繁栄の絶頂を超えて、既に老朽の坂を降りつつある。或は既に瀕死の状態にあるものと見ていい。そして其の廃墟の上に、民衆の新しき社会が将《まさ》に勃興せんとしつつある。
此の新勃興階級はそれ自身の芸術を持たなければならない。其の思想と感情との已むに已まれぬ表白としての、其の若い溌溂とした生命力の発現としての、そして又、老い傾いた旧い社会に対する戦闘の機関としての、新しき芸術を持たなければならない。民衆によって民衆の為めに造られた芸術を持たなければならない。新しき世界の為めの新しき芸術を持たなければならない。若し此の芸術が出来なければ生きた芸術はない。過去のミイラが眠っている、一種の墓地のような、博物館があるばかりだ。
少しも党派心のない、無限な、永遠な、普遍な、民衆芸術と云うような事を云う人がある。これは貴い夢想である。将来の世代は、若しそれが出来れば、幾世紀かの後にはそれを実現するだろう。しかし今のところは、永遠を現在の瞬間に置いて、今日の時代と共に生きる事を努めなければならない。芸術は其の時代の渇望と引離される事は出来ない。民衆芸術は、民衆の苦痛と、其の希望と、其の闘
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