この法律の違犯にならない行為がその権利であると認められるようになった。
これと同時にまた、征服階級のいわゆる教育ということが行われた。両階級の地位の不平等を維持して行くためには、もともと被征服者階級の方があらゆる点において劣等種族であるという観念を、是非とも被征服階級自身の心中に、しかと植え付けて置かねばならぬ。もし被征服階級がいささかでもこれに疑惑をさしはさむようになれば、それは社会の安寧と秩序との大なる紊乱を生ずるもととなる。そこでこの観念を強制するために、諸種の政策が行われた。いわゆる国民教育の起原にしてかつ基礎たる組織的瞞着の諸種の手段が行われた。
けれどもただこれだけでは治まって行くものではない。元来ある一種族が征服せられたというのは、ほんの偶然の出来事からか、もしくは戦争術が下手だったからである。その他の点においては、あるいは被征服者の方がかえって優れていたかも知れぬ。そこで征服者は、利害のまったく異なった被征服者を統治する困難から遁れるために、被征服者の中のあるものの助けを乞わねばならなくなる。被征服者の中にもまた、多少の特権を得て、容易にこれに応ずるものが出て来る。
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