た。菓子屋の箱に山のように盛った餅菓子が出た。それを食ってしまうと、こんどはちょっとした肴に酒が出た。本当の牛飲馬食だ。もともとあまり酒は飲めない僕も、みんなの勢いに駆られて、多少の盃を重ねた。そして山田等の詩吟につれて、みんなの驚きのうちに「宗次妙齢僅成童」などと吟じ出した。それで僕はすっかり山田等の「仲間」になってしまった。
二
第一期生は、最初の後輩である第二期生に対しては、ずいぶんひどく威張った。またずいぶんひどくいじめた。が、第三期生の僕等に対しては、ずいぶんあまくしてくれた。そして僕は、たぶんそんなのは僕一人だったろうと思うが、すぐにこの先輩から「仲間」として可愛がられるようになった。
最古参生たる第一期生の「仲間」には、学校の中では、どんな悪いことでも無事にやれた。たとえば煙草は、もし見つかれば営倉ものだった。しかしそれも、彼等だけには、安全な場所があった。国の先輩は僕をそこへ連れて行くことは最初遠慮していた。が、他国の先輩、ことに東京から来た先輩がすぐに僕をそこへ連れて行った。
また、これは見つかれば軽くて営倉、重くて退校の処分に遇うのだが、夜みんなが寝
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