て、それがフラフラ右左によろめきながら幾度も門の溝の中に落ちかけた。妙だな、と思って肩をつかまえて聞くと、
「それが君んとこの子供の仕業だと言うんだそうだ。それでとにかくその家まで送り届けさして置いたそうだがね。医者は頸の根のところは急所で、ちょっと針でさしても死ぬくらいだが、これは治ってもたぶん馬鹿になってしまうだろう、と言っていたそうだ。」
という岡田少佐の話だったんだそうだ。
そう言われると僕は思い出した。その頃学校では毎日「隅取り」という遊びをしていた。それは雨天体操場の二つの隅に各々一隊ずつ陣取って、その陣屋を守っているものを押しのけくぐり抜けて、それを占領する遊びだった。が、普通尋常に押しのけくぐり抜けているんでは、いつ勝負がつくか知れない。それでまず第一攻撃隊にそれをやらして置いて、敵の陣容の大ぶくずれかかった時に、一人か二人の勇者をそこへ飛びこませるのだった。この勇者等は、組打ちをしている敵味方の肩の上から陣屋のなるべく奥へ飛びこんで、一挙にしてその一番奥の隅を占領するのだ。僕はいつもこの勇者の役目がお得意でいた。その飛びこむ時に、何とかいう子の肩の急所を蹴ったのじ
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