山田の出勤を待っている馬に乗っては、門内を走らして遊んでいたものだそうだ。
「この母方のお祖父さんというのが面白い人だったんだそうですね。大阪で米はんにいろいろ聞いたんだが、あんまり面白いんですっかり忘れちゃった。が、兄さんなんかはこのお祖父さんの血を受けているのかも知れないね。」
いつか次弟の伸といろいろ近親のものの話をした時、弟がこう言って、しきりに折があったら米はん(従兄)にその話を聞いて見るように勧めた。
それまで僕は、母方の親戚では、山田の伯母と、そのすぐ次の妹の米はんのお母さんと、それからお祖母さんとだけしか知らなかった。そしてこのお祖父さんについては、何にも聞いたこともなく、また考えて見たこともなかった。お祖母さんが妙に下品な人だったので、母の家というのも、ろくな家じゃなかったろうくらいにしか考えていなかった。
それにこの米はんが大阪のある同志と知っていて、その同志との間によく僕の話をするということも聞いていたので、多少なつかしくも思っていた折だった。で、その翌年であったか、もう二、三年前になるが、大阪へ行ったついでにしばらく目で米はんを訪ねて見た。米はんはお祖母さ
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