カルな憤怒の後に、その肉の力をもっとも発揮するのだった。
 しかし今晩はもう、僕は彼女のこの力の中に巻きこまれなかった。僕は彼女のこの力を感ずると同時に、なおさらに奮然としてそれに抵抗して起った。今晩の彼女の態度は、初めからそのふだんの執拗さや強情の少しもない、むしろ実にしおらしいおとなしい態度だった。が、このしおらしさが、彼女の手といってもいいくらいに、こうした場合にはきっと出て来るのだった。が、僕は最初からそれを峻拒していた。
 彼女は決然として自分の寝床に帰った。そしてじっとしたまま寝ているようだった。
 僕はいよいよだなと思った。こんどこそは本当にやるのだろうと思った。僕は仰向きになったまま両腕を胸の上に並べて置いて、いつでも彼女が動いたらすぐに起ちあがる準備をして、目をつぶったまま息をこらしていた。一時間ばかりの間に彼女は二、三度ちょっとからだを動かした。そのたびに僕は拳をかためた。
 が、やがて彼女は起き出して来た。そして僕の枕もとの火鉢のそばに坐りこんだ。
 僕はこれは具合が悪いなと思った。横からなら、どうにでもして防げるのだが、頭の方からではどうしても防ぎようがないと思
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