言ったので多少胸がすいたものと見えて、何も考えないで静かに眠ったようにしていることに、こんどは成功した。
「ね、ね。」
 それからまた一、二時間してのことだろう。彼女は僕を呼び起すように呼んだ。
「ね、本当にもう駄目?」
「駄目と言ったら駄目だ。」
「そう、私今何を考えているのか、あなた分る?」
「そんなことは分らんね。」
「そう、私今ね、あなたがお金のない時のことと、ある時のこととを考えているの。」
「というと、どういう意味だい?」
「野枝さんが綺麗な着物を着ていたわね。」
「そうか、そういう意味か。金のことなら、君にかりた分はあした全部お返しします。」
 僕は彼女に金のことを言いだされてすっかり憤慨してしまった。
「いいえ、私そんな意味で……」
 彼女は何か言いわけらしいことを言っていた。
「いや、金の話まで出れば、僕はもう君と一言もかわす必要はない。」
 僕は断じてもう彼女の言いわけを斥けた。そして彼女がまだ二言三言何か言っているのも受けつけずに黙ってしまった。
 いつでもあのくらい気持よく、しかも多くは彼女から進んで、出していた金のことを、今になって彼女が言いだそうとは、まった
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