ていた。しかし、あんな小さな手提げの中では、七、八寸ものでも隠せまい。すると彼女はそれを懐ろの中にでも持っているのかな。とにかく、刄物なら、何の恐れることもない。彼女がそれを振りあげた時にすぐもぎ取ってしまえばいいのだ。だが、もしピストルだと、ちょっと困る。どうせ、ろくに打ちようも知らないのだろうが、それにしてもあんまり間が近すぎる。最初の一発さえはずせば、もう何のこともないのだが、その一発がどうかすれば急所に当るかもしれない。しかし、それも滅多にはないことだろう。一発どこか打たして置いて、すぐ飛びかかって行けばいいのだ。女の一人や二人、何を持って来たって、何の恐れることがあるものか。すぐにとっちめて、ほうり出してしまえばいいのだ。
「ね、何か話ししない?」
一、二時間してからだろう。彼女は僕の方に向き直って、泣きそうにして話しかけた。彼女にはこの黙っているということが何よりもつらいのだ。寂しくて堪らないのだ。どなり合ってでも、何か話していたいのだ。そして今は、もう堪らなくなって、何もかもいっさい忘れたようになって、数日前の彼女と僕とに帰って話したかったのだ。
「してもいい。が、愚痴
前へ
次へ
全234ページ中220ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
大杉 栄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング