間もなく一度銀座でたしかにその人らしい顔をちょっと見たのだが、どこにどうしていることか。
しかし、学校の入学試験をすぐ目の前に控えていた僕は、いつまでもそうしていることができなかった。母の葬式が済んでから一週間目くらいで、僕はまた上京した。そしてまた、母のことも礼ちゃんのことも綺麗な細君のことも、何もかも忘れたようになって、勉強しだした。
三
十月の初めになって、僕は東京中学校(今はもうないようだ)と順天中学校との五年の試験を受けた。
今はどうか知らないが、その頃の東京の私立のへぼ中学校では、ほとんど毎学年毎学期に各級の入学試験をやった。そしてその毎学期の初めに二、三度生徒募集をして、そのたびに試験を受けさしては受験料を儲けるのを例としていた。東京中学校のも順天中学校のもその最後の第三回目の生徒募集の時だった。
僕はそのどっちかにどうしてもはいらなければならないと思った。が、その試験は二つともほとんど同時に行われるのだった。僕はもう自分の学力には自信があった。しかし、万一の時にはと思って、少し早くからはじまる東京中学校のは自分で受けて、順天中学校のは換玉を使うことに
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