すもの。それや、どんなにかあなたをお待ち遊ばしたんですか。幾度も早く死なして死なしてとおっしゃるんですけれど、そのたびに私があなたのことを申しあげると、頷いては黙っておしまいなさるんですもの。」
お嬶は一晩じゅう、ほとんどこの話ばかり繰返して言って聞かしては、自分も泣きまた僕をも泣かした。
「それに、お母さまは、お嬶丈夫になってすぐ帰って来るからねと大きな声でおっしゃってお出かけなすったんだけれど、実はご自分でも覚悟をしていらっしたんですよ。私、お子さん方をお連れして行く時に、お召物を出しに箪笥をあけて見ますと、お母さまのお召物に何だか妙な札がついているんです。よく見ますと、それがみんな春とか菊とか松枝とかとお嬢さん方のお名前が書いてあるんでしょう。私、腹が立ちましてね。何もそんな覚悟までして、わざわざ新潟くんだりへ手術なぞしにいらっしゃらなくてもよさそうなものだと思いましてね。私、そのことはお母さまに存分お怨みを申上げましたわ。」
お嬶はまたこんな話もした。そして、母の死は実は医者の過失なので、手術後腹が痛み出してまた切開して見たら中から糸が出て来て、大変な膿を持っていたなぞとも
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