をあげて答えた。
「それじゃ仕方がない。すぐ軍医を呼んでくれ。」
僕はそこへ横になりながら言った。そして彼の名を呼んだ。
「仕方がない。二人でいっさいを負おう。」
僕は彼のうなずくのを見て、そのまま眠ってしまった。
二週間ばかりして、僕がようやく立ちあがるようになった時、父が来た。
父は最近の僕の行状を聞いて、「そんなに不埓な奴は私の方で学校に置けません」と言って、即座に退校届を出して僕を連れて帰った。
が、帰ってしばらくすると、「願の趣さし許さず、退校を命ず」という電報が来た。
彼も同時に退校を命ぜられた。
新発田にはもう雪が降り出した十一月の末だった。
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自叙伝(五)
一
父に連れて帰られた僕は、病気で面会謝絶ということにして、毎日つい近所の衛戍病院に通うほかは、もと僕の室にしていた離れの一室に引籠っていた。
この面会謝絶ということは僕自身から言いだしたのだが、父と母とはそれをごく広い意味に採用してしまった。離れには八畳と六畳とあって、奥の方の八畳は父の室になっていたのに、父はまるでその室にはいって来なかった。母も僕の室に来ることはめった
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