ろう。も一つは少し厄介なことだが、もしお母さんを呼ぶ必要があるなら、そしてそのいるところがないなら、家で世話をしてやってくれないか。僕は足下の秋水に対する悪感情はよく知っている。しかし、この際これほどの雅量はあってほしい。また、かくのごときは、彼に対するもっともよき復讐だと思う。もし御承知なら、一度秋水と会って相談してくれ。
 お為さんは、古本を買っては売りしているということだが、本郷の例の本屋と協定して、初めに十円か十五円出して置いて、毎月五十銭くらいの割で本を借り出すような便利はできまいか。月に四、五冊ずつで二カ月目には返せる。
 今見たい本は、『帝国文学』の発行所から出るもので物集博士の日本文明史略、長岡博士のラジュウムと電気物質観、鳥居氏の人種学、平塚学士の物理学輓近の発展、シジュウィックの倫理学説批判、高桑博士のインド五千年史、物理学汎論(著者の名は忘れた、二冊もの)以上、『帝国文学』の広告を見よ。
 文学ものでは、博文館の通俗百科全書中の文学論、折々言う抱月の近代文芸の研究、それから早稲田の文芸百科全書、外に何か最近哲学史というようなもの。
 経済学では、金井博士の社会経済
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