は盛んな干渉のあることと思っていた。干渉のあるくらいなら僕等の我を棄てて、それらの人に多少のことは委してもいいと思っていた。事は違った。もし今になって、自分に責任のかからぬ範囲において何等かの干渉を試みるものがあっても、もうそれらの人の言はあまり重きを置くに及ばない。ことに遺った金と言ってもいくらもあるではなし、その処分は実際に責任を帯びる足下がいいように計っていい。僕は今まで、足下がただ責任だけあって、そして万事に遠慮しなければならぬ位置にはなはだ同情していた。
渡辺弁護士の世話には大いに感謝している。それから向いの加藤家、いずれもよろしく言ってくれ。
この次の面会は春、その次の面会は夏、僕の出るのも大ぶ近づいた。
前の手紙に言ったよう、音楽院のような組織で自由語学塾というようなものを建てたら、これで家の生活だけは保証できると思う。その上僕は、できるなら雑誌も出そう、反訳もしよう、先生もしよう。また雇手があるなら、ドウセ当分は公然のムーブメントできまいから、運動をしないという条件で雇人にもなろう。要するに二、三年はまったく家政のために犠牲になろう。そのつもりで足下もあまり心配し
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