間会わんので、彼の性行については何とも言えぬが、足下と彼との間にはまだ何となく意志の疎通がないように思う。従来、足下は彼については、母からの悪口のみを聞いている。彼もまた同様のことと思う。僕は初めからこの間を心配していた。なお、お互いによく努めてくれ。僕は、たとえ彼が如何様であっても、僕のできるだけのことは尽してやる考えでいる。また彼としてはこの際、自ら進んで他の弟妹等の世話のやけないように努めるのがその務めだと思う。これらのことは渡辺弁護士をでも通じて、彼に理解させて置いてくれ。
 もし春が誰か一人引受けるとなれば、松枝よりは菖蒲でも頼んだらどうだろう。松枝は僕等の手ででもいくらでも嫁に行先はある。
 勇は工場へでも出るというなら、家で食わして、その得る金はすべて本人の自由にさせたらどうだろう。それでも勉強もできよう。また、ためる気ならそれもできよう。その上、僕等はなおできるだけの力を尽してその望みを果させてやろう。
 進はまだ静岡にいるのか。これは早くきまりをつけてやってくれ。
 僕等夫婦は、元来親類間に非常な不信用であった。したがって僕は、親類に本当に親切気があるなら、こんどなど
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