こんどはロシア語を始めようと思う。少々欲張り過ぎるようだけれど、語学の二つ三つも覚えて帰らなければ、とてもこの腹いせ[#「腹いせ」に傍点]ができない。これとイタリア語とは二カ月に各々一冊ぐらい読む予定だから、先日話したものを大至急送った上、さらに二月の面会の時にまた何か持って来てくれ。あえてエンゲルスを気取る訳でもないが、年三十に到るまでには必ず十カ国をもって吃って見たい希望だ。それまでにはまだ一度や二度の勉強の機会があるだろう。
仙境なればこそ、こんな太平楽も並べて居れるが、世の中は師走ももう二十日まで迫って来たのだね。諸君の歳晩苦貧のさま目に見えるようだ。僕はこれから苦寒にはいって行く。うち[#「うち」に傍点]の諸君およびその他の諸君によろしく。さよなら。
証拠品の旗三旒および竿二本を返すそうだから、控訴院検事局まで取りに行ってくれ。きょう上申書というのを出して、大杉保子が受取りに行くからと願って置いた。菅野に、関谷に談判して書物をとりもどすよう頼んでくれ。
*
堀保子宛・明治四十二年二月一日
手紙見た。ちょうど四カ月目に懐かしい筆跡に接したので非常に嬉しかった。今日
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