しばらく何にもしないでぼんやりしている。するとこんどは退屈で堪らなくなる。やむを得ずまた書物を手に取る。毎日こんなことを幾度も幾度も繰返して暮している。しかし別に大したほどではないのだから、出てから少しの間静かに休養すればよかろうと思う。しもやけ[#「しもやけ」に傍点]も、一時は大ぶひどかったが、暖かくなるに従ってだんだん治って来た。
その後セーニョボーの話はどうなったか。古那はどこの本屋へ相談したのだろう。もしその話がうまく行ったら、当分どこかの田舎に引っこみたいね。温泉でもよし、また海岸でもいい。『平民科学』の原稿はただ写し直しさえすればいいようになっている。
志津野の子が生れたそうだね。まつのさんはどうか。この手紙は私事ばかりだから人に見せるに及ばぬ。もうあとが三日、四日には会える。さよなら。
[#地付き]巣鴨にて、一二〇〇生
[#改ページ]
市ヶ谷から(三)
*
堀保子宛・明治四十一年七月二十五日
……もその肩を聳やかして、それはそれは意気けん昂なものだ。礼さんも病監にはいっているのだそうだね。
十七日に電車の判決があったのだから、すぐ赤い着物を着ることと思
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