ト反覆愛読されつつある。
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堀保子宛・明治四十一年一月三十一日
手紙が隔日に二通ずつしか書けないのみならず、この隔日もまた折々障礙せられるので不便で困る。二十五日に書こうと思ったら、監獄に書信用紙がないと言う。次の二十八日には、大阪へ出す手紙を書いている中に時間が来て監房へ連れて帰られる。昨日はと思ったら、何とか天皇祭とかで休みだと言う。そんなことで今日ようやく第二信を書く。
あちこちから「未だ健康も回復しないうちにまたまた入獄とは」というのでしきりに見舞いが来る。ところが、入獄の時に体重が十四貫五十目あった。巣鴨を出る時に較べれば一貫三百五十目増えている。また先きに巣鴨にはいった時に較べれば百目ばかりしか不足していない。そしてこの百目はたしかに本郷警察の二日と警視庁の一日とで減ったのだと思う。すると僕の健康はもう十分に回復していたのだ。幸いに御安心を乞う。
かえってまだ碌に監獄っ気の抜けないうちに来たのだから、万事に馴れていて、はなはだ居心地がいい。飯も初めから十分に食える。ただ寒いのには閉口するが、これとても火の気がないというだけで、着物は十分に着ていられるのだから
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