終出ているが。毎週一度くらいは胸に聴診器をあてて貰うが別に異状はないようだ。不思議なくらいだ。こんなにからだの具合のいい冬はもう十年余りも覚えがない。
もっとも、腸の方ではちょっと弱った。入監の翌朝からうまく毎朝一度通じがあるんだ。さすがにまだ夏の監獄の気が抜けずにいるんだと思って心丈夫に思って居たら、大晦日の晩から下り出して、とうとう本月の初めまで下痢で通した。ひどいんじゃない。毎日ほんの一回か二回かのごく軽い下痢なのだ。しかしちょうどこれと同じ下痢にかつて千葉で半年間いじめられたのだ。それがあと三、四年もたたったのだ。またかと初めの間は実に悲観したが、これもとうとう屈伸法で、かどうかは知らないが、とにかく征服してしまった。
この屈伸法のきかないのは霜やけ一つだ。ずいぶん注意して予防していたんだが、とうとうやられた。そして一月の末から左の方の小指と薬指とがくずれた。小指はもう治りかけているが、薬指は出るまでに治りきるかどうか。この創が寒さに痛むのはちょうどやけどのあの痛みと同じだ。一日のうちのふところ手をして本を読んでいる間と寝床にはいっている間とのほかは、絶えずピリピリだ。
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