#終わり二重括弧、1−2−55]のようになるのじゃないかとひどく心配していた。もっともこの四、五日は便も大ぶ具合がよし、おとといの雨にも別に変りはなかったが、うまくこれで続いてくれればいいがと祈っている。
山川等の出た日だった。さほど強い風でもなかったが、もう野分と言うのだろう、一陣の風がさらさらと音するかと思ううちに、この夏中さしわたし二尺あまりもある大きな葉の面に思うまま日光を吸うていた窓さきの桐の葉がばさばさと半分ばかり落ちてしまった。そしてその残っているのも、あるいは破れあるいは裂けて、ただ次の風を待っているだけのようだ。秋になったのだ。
病監の前のコスモスもずいぶん生え茂って、もう四、五尺のたけに延びた。さびしい秋の唯一の飾りで、かつやがては僕等を送り出す喜びの花になるだろうと、ひたすらにその咲き香うのを待っていた。
すると本月の二日、突然ここに移されて来た。何のためだかは知らないが、千葉にはいささかの名残りもない。塵を蹴立ててやって来た。ここでは八畳敷の部屋に一人住いしている。仕事はきょう木あみ。前には二枚ずつを三本にして編むのだったが、こんどは五本に進歩した。またま
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