ずいの少ないのと叱られないようにと思って、一生懸命にやっているが、日に十六丈何尺というきまりのをようやく三丈ばかりしかできない。夜業がなくて、暗くなるとすぐ床につけるのと、日曜が丸っきり休みなのとが、はなはだありがたい。
 六日に例の課長さん※[#始め二重括弧、1−2−54]今の監獄局長、当時の監獄課長谷田三郎君※[#終わり二重括弧、1−2−55]が来て、「きょう君の細君が本を持って来たから、差支えのないものだけ名を書いて置いた」という仰せだった。その本は受取った。これからは司法省の検閲を経る必要はない。直接ここへ持って来てくれ。至急送って貰いたい本は、
 英文。ダーウィン航海記。ディーッゲンの哲学。ショーのイブセン主義神髄。クロのロシア文学。モルガンの古代社会。個人進化と社会進化。産業進化論。
 独文。科学叢書。
 露文。文学評論。
 伊文。論理学。
 古い本を宅下げするようにして置くから、近日中にとりに来てくれ。大ぶ多いからそのつもりで。本は五冊ずつ月に三度下げて貰える。
   *
 堀保子宛・明治四十三年十月十四日
 八月に書いた手紙は不許になったが、九月に出したのは着いているの
前へ 次へ
全118ページ中103ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
大杉 栄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング