初はそれを少々可笑しく思っていたが、この同情が重なるに従ってだんだん不安になり出して来た。監獄の役人がこれほどまで思っているのだから、あるいは実際検事局で僕等をその共犯者にしてしまってあるのじゃあるまいか、と疑われ出して来た。まさかと打消しては見るが、どうしても打ち消し得ないあるものが看守等の顔色に見える。そうなったところで仕方がない、とあきらめても見るが、そうなったのかならぬのか明らかにならぬうちは、やはり不安になる。
やがて堺は無事に満期出獄した。それでこの不安は大部分おさまった。しかしまだ役人等の僕に対する態度には少しも変りがない。僕自身ももう満期が近づいたのだから、出獄の準備をしなければならぬと思って、二カ月に一回ずつしか許されない手紙や面会の臨時を願い出ても、典獄や看守長はそんなことをしても無駄だと言わんばかりのことを言って、一向とり合ってくれない。ただ気の毒そうな顔色ばかり見せている。どうかすると僕一人があの中に入れられるのかな、と疑えば疑えないこともない。が、その後少しも検事の調べがないのだから、とまたそれを打消しても見る。
その間に僕は大逆事件の被告等のほとんどみん
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