少なくなった。そこへ突然検事が来て、今お前等の仲間の間にある大事件が起っているが知っているかというお尋ねだ。何か途方もない大きな事件が起きて、幸徳を始め大勢拘引されたということは薄々聞いていた。その知っただけのことを、またどうしてそれを知ったのか、監獄の取締上一応聞いて置きたいと言うのだ。うろん臭いのでいい加減に答えて置いた。
すると数日経って、不意に、恐ろしく厳重な警戒の下に東京監獄へ送られた。そして検事局へ呼び出されて、こんどは本式に、いわゆる大逆事件との関係を取調べられた。
「この事件は四、五年前からの計画のものだ。お前等が知らんという筈はない。現にお前等もその計画に加わっていたということは、他の被告等の自白によっても明らかだ。」とくどくどと嚇かされたりすかされたりするのだが、何分何にも知らないことはやはり知らないと答えるより外はない。
監獄では典獄を始めどの看守でも、しきりに、気の毒そうに同情してくれる。
「こんな事件にひっかかったんでは、とても助かりっこはない。本当に気の毒だな。」
と明らさまに慰めてくれる看守すらある。みんなで僕等を大逆事件の共犯者扱いするのだ。
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