であった。手があれるだけならまだしも下手をやると赤むけになる。埃が出る。かなり骨が折れる。それを昼の間十時間くらいやって、その上にまた夜業を二、三時間やらされる。初めの一日でうんざりしてしまった。
三度減食を食う[#「三度減食を食う」はゴシック体]
三日目か四日目のことだ。毎日のこの仕事に疲れ果てて、少しでも仕事の手を休めていると、うとうとと眠ってしまう。坐りながら幾度か眠っては覚め、眠っては覚めしているうちに、とうとう例の胡麻塩の昼飯後の三十分か一時間かの休憩時間に、いつの間にか居眠りのまま横に倒れてしまった。
「こら、起きろ!」
という声にびっくりして目を覚ますと、僕は自分のそばに畳んである布団の上に半身を横たえて寝ていた。
「横着な奴だ。はいる早々もう真っ昼間から寝たりなんぞしやがって、貴様は監獄の規則なんぞ何とも思ってないんだな。」
看守は、貴様のような壮士が何だという腹を見せて、威丈高になって怒鳴りつづけた。
しばらくして典獄室へ呼びつけられた。僕はみちみち、はなはだ意気地のないことだが馴れない仕事に疲れてつい、とありのままの弁解をするつもりで行った。ところが、典獄
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