。論理は自然の中に完全に実現されている。そしてこの論理は、自然の発展たる人生社会の中にも、同じくまた完全に実現せられねばならぬ。
「僕はまた、この自然に対する研究心とともに、人類学や人間史に強く僕の心を引かれて来た。こんな風に、一方にはそれからそれへと泉のように学究心が湧いて来ると同時に、(中略)
「兄の健康は如何に。『パンの略取』の進行は如何に。僕は出獄したらすぐ多年宿望のクロの自伝をやりたいと思っている。今その熟読中だ。」

 それからもう出獄近くなって山川に宛てた手紙を出した。その中に法廷に出る云々というのは、あとの新聞紙条令違犯の公判の時のことだ。
「きのう東京監獄から帰って来た。まず監房にはいって机の前に坐る。本当にうちへ帰ったような気がする。
「僕は法廷に出るのが大嫌いだ。ことに裁判官と問答するのはいやでいやで堪らぬ。いっそのこと、ロシアのように裁判しないですぐシベリアへ逐いやるというようなのが、かえって赤裸々で面白いようにも思う。貴婦人よりは淫売婦の方がいい。
「裁判が済めばまず東京監獄へ送られる。門をはいるや否や、いつも僕は南京虫のことを思って戦慄する。一夜のうちに少な
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