[#「びっこ」に傍点]だとか、足腰のろくに利かない老人だとかの、片輪者や半病人をいれる半病監みたようなものになっていた。僕は二度ともこの建物の中の広い一室をあてがわれた。
 初め東京監獄からここに移されて、冷たい暗い一室の中にほうり込まれた時には、実は少々心細かった。春ももう夏近い暖かい太陽のぽかぽかと照る正午近い頃だった。それだのに、室へはいると急に冷たい空気にからだ[#「からだ」に傍点]じゅうをぞっと打たれる。四方の真白に塗った煉瓦の壁や、入口の大きな鉄板の扉は、見るからにひいやりとさせる。試みにそれに手をあてて見ると、そこからぞくぞくと冷たさが身にしみて来る。それに、窓が伸びあがってもとどかない、上の方に小さく開いているので、薄暗くて陰気だ。座席として板の間に敷いてある一枚のうすべり[#「うすべり」に傍点]までが、べとべとと湿っているような気がする。
 命ぜられたまま、扉に近く扉の方に向いてこのうすべりの上に坐っていたが、その扉は上下が鉄板でその間が鉄の格子になっていて、しかも僕の室のすぐ真ん前に看守がテーブルを控えて突っ立っているので、絶えず監視されているという不愉快が、その看
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