ることが出来なかった。それも千鶴子の場合はともかくとして、真紀子と久慈との場合は結婚同様の二人の生活だった。今久慈を除いた後の四人が他人を混えず会うということは、矢代のみならず、それぞれにとっても未経験のことであった。各自の紊れ散る思いの面に浮ぶことは、移り変る旅の日の山川草木の姿といっても、揉み刺して来るものは人の姿にちがいなかった。しかし、振り返って見ても、よく千鶴子と自分はここまで来たものだと彼は思った。そして、久慈が二人のことを、「あの二人の馬鹿が、西と東に別れ地球を締めつけているようなものだ」といった戯れも、そう云われてみれば、二人の情念の伸び巻いて断ち切りがたかった当時の烈しい様も思い出され、二疋の蛇のような異様な姿として描かれて来るのだった。それも今はここで草叢を覗く二人であろうとは――そう思うと矢代は、自分の尾のどこかにまだ抜かぬ一本の剣が潜んでいるのも感じて来るのだった。しかしその剣はいつか一度は必ず噴き放って、焔の中を貫きぬけることもあるだろう。もしそれが宝剣だったら、天上へ届く鉄塔とならぬものとも限らない。――矢代は自分のこのような念願や空想は、世の中の男の誰もが
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