て天に捧げよ、と彼の心に云いかけ、肚のあたりでしっとりと留まるのだった。それはまた自分ひとりにとってそうではなく、やがて死すべきものなら一度はそう思ってみてこそ、どこにも間違いのない唯一のものの姿の静けさだった。矢代は、道というものはそういうものから連って伸びつづいているものに思われ、現に自分の歩いているこの歩道も、その心に縛るものの一端だとさえ思われて来るのだった。
矢代の父の四十九日も過ぎたそのころから桜が咲いた。分骨にした父の骨を九州の郷里の寺と京都の本願寺に納めたいという母の意に随い、矢代は西へ旅立つ日を待った。彼と一緒に母か妹かどちらか一人加わる筈のところも、予後の妹の疲れや千鶴子からの返事のことなども考え、特にその用もないことを矢代は主張してみたが、幸子はやはり行きたがった。
「京都までなら良いだろうが、しかし、九州までとなるとまだ危いよ。」
「じゃ京都まで。」
と幸子は云った。そして、いつか病院へ見舞に行ったとき、京都の美しさもよく見るようにと奨めた彼の言葉を覚えていて、それを楯にしつこく彼を困らせた。表面派手に見えてよくおどける癖のある幸子は、父の遺品が出て来る
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