で、ぐんぐん彼を氷の中へ誘い込んだのも、ちょうどこんな千鶴子だった。
 しかし、いずれにしても、今この門を潜るのは少し無謀なことであった。思慮あれば避けるべき筈の場合だったが、門柱の横の潜戸の中へ消えた千鶴子の後から、何んの相談もなく続いて塩野も潜ると、矢代は自分ひとりそこから去るのも、むしろいかがわしい咎めを残すばかりに感じられ、特別な一大事の前後の処置とは思えぬ気軽さで彼も潜っていった。そして、底白い砂の拡がりを踏みつつ彼は、いちいち自分の微細な動作まで手にとるように分る緊張にも拘らず、どこかぶらりとした旅ものめいた暢気さもあって、まだ見ぬ千鶴子の母に会う興味さえ覚えて来るのだった。矢代を撥ねつづけていた母親だけに、彼は初めてその人に会うことに張り合う気もうすうすに感じ、大玄関の框の前でみなと一緒に靴を脱いだ。
 玄関から畳廊下を右の方へ行った突きあたりのスウィッチで、廊下より一段低めな応接室に灯が入った。隣室から離れた感じの厚壁に包まれた親しみある部屋の中を矢代は眺め、また庭を暫く眺めた。
「この画、佐佐んだが、この景色は君もたしかに見た筈だよ。」
 と塩野は暖炉棚の上に懸ったパ
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