ら叱りつけられるようで、たしかに先日侯爵邸で会ったときとは、また別した渦巻きを体内に感じ、ともすると表情も固まろうとするのを、彼はようやく平素のままに心を支えて帰りを急いだ。
「今夜のお話はたいへん結構でした。もう少し精しくお訊きしたかったのですが、今日は友人が多いものですからこれで失礼します。」
エレベーターの扉の中へ皆の這入るのを眺め、矢代も久木男爵にそう云って後から自分も入った。遊部や速水は侯爵夫妻の空いた自動車で帰ることにしたが、矢代は昼からの会合に人疲れを覚えたので乗り切れぬ自動車をやめて歩くことにした。しかし、急に由吉ひとりは平尾男爵らとホテルへ残ると云い出したため、千鶴子だけ先に帰ることになった。
「枕木さんからのお土産でもあるんでしょう。きっと。」
宿泊する由吉の意存を千鶴子はそう云い当てて矢代と歩いた。他に塩野と佐佐もいた。みな疲れている様子で薄霧の降りた夜道を黙りつづけた。海からすぐの河口まで来たとき、誰からともなく橋の上で自然に足が停った。ほの白く煙っている潮の灯を見ているうち、佐佐が軽い吐息をついた。欄干の鉄の冷えているのがいつかまた旅の日の夜を思い出させて
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