灯台の鋭く明滅する光りが見えた。どこかフリジヤの花を思わせる少女たちの姿だった。光りの廻って来るのを待っているうち、矢代がパリへ着いて間もないころ料理店の一隅で、偶然この幼い子たちを見た記憶が蘇って来た。すると、またその光りの遅い廻転は、ふと父の骨が火になって出て来たときの、最初の鮮やかな色を思い出させた。それは繊細な花茎を連想した直後の彼の感傷とはいえ、父の死の光りの前の少女の姿は、一層活き活きと揺れたわむ呼吸に見えて美しかった。
「平尾さんのお嬢さんはパリでお生れになったのですか。」
久木男爵も、二人の令嬢の自然なフランス語を耳に入れたらしくそう訊ねた。
「そうです。この下の方ですが、これで日本を今日初めて見るのですよ。いろいろ教えこむのにこれからまたひと苦労です。何しろパリじゃ、子供の遊戯に、恋人から手紙の来るのを待つ遊びがあるもんですから、見ていてときどきひやりとしますよ。」
平尾男爵のそう云うのも待たず、皆の笑い出す声の中に沈まりながら、令嬢たちはまだ無心に話しつづけた。
「子供のことというと、僕も外国では自分の子供と同じ年恰好の子に会うと、いつも一緒に遊んで見ることにし
前へ
次へ
全1170ページ中919ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
横光 利一 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング