志や感情じゃどうしようもない、美しい姿がある以上は。」
「じゃ、そのうち、僕も御幣を担がせて貰いましょう。」と遊部は静にいって、皿の上のマヨネーズを攪き廻した。
矢代は遊部にこの場は先ず勝ったというものの、明らかに腹立ちを与えて負かした自分の説得の不足を残念に思った。それも終りに、そんな侮辱を含んだ口吻を吐かせたと思うと寂しかったが、しかし、今日の遊部との論争は侯爵邸の夜よりはまだ良かった。矢代が遊部を説得するに都合の良い何よりの強力な武器を、槙三から持ち運んで来てくれたのは、他でもない千鶴子だったからである。またこの日の千鶴子は侯爵邸の夜とは違い、矢代の信仰の対象に槙三が動かされて来たことを喜んでいる様子が顕れ出ていて、他人事ではなく彼女もまた嬉しそうだった。この千鶴子がともに信仰に近づいて来てくれた表情の明るさは、また矢代の明るさでもあり、そして、それこそ長らく彼の望んで熄まなかったものの一つだった。
「僕は君と一緒に帰って来て得をしたのは、何より俳句を勉強したことだったよ。」と平尾男爵は東野に云った。「あれはだいいち論争したくなくなって善いね。もし世界に俳句を拡めたら、世界は見
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