入っていった。矢代も彼の後から追っていった。
「僕は外国へ行く前に、よくここのベンチへ坐って海の向うを見ながら、子供みたいに夢想に耽ったものだが、今度はどんなものか、そこの同じベンチへ坐って見てやろうと思ってね。」
 東野はそう云いつつ噴水のある傍を通り、芽の出た若芝の周囲を廻って、海岸よりのベンチの一つを選ぶと腰を降ろした。
「ここだよ。もう僕は前のようじゃないからね。何んと有りがたいことだろう。」
 両手を後頭部に廻し後へ反りつつ、東野は海を見て云った。少し老人じみて見える横顔の眼もとに細かい皺が出来ていたが、まだ眼底の光りは若若しく疲れてはいなかった。園内の立木が遠く離れていたので、かっと強い日光が額に射した足もとの海面で測量船が人もなく揺れている。その向うに陽を孕んだ帆船が風に逆らい、舷側に白い泡を長く立てていた。
「君、僕はいま非常に気持ちが良いのだよ。われながら興奮を感じるほど混りけがないように思うんだが、これがいつまでも続いてくれればね。君はどうだった?」と東野は急に矢代の眼の中を覗き込んで訊ねた。
「僕もそうだったなア。しかし、一度そういうことが有ったと思うことは、なか
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