「いいなア、僕も芽の出るころに帰って来たのか。いや、僕は忠義を竭すよ。誠忠――これ以外に僕らにはあり得ない。これは実に豊かなものだよ。ただ人はこれを間違えて、こせこせしたものだと思うようにさせる傾向のあるのは、もっとも慎しむべきことだね。とにかく、あのこせこせした日本精神だけは、一番激しい非日本精神だよ。」
 東野はそう云ってからも、またのべつ幕なしに饒舌りたいらしく、何か憑かれたように止めどもなく車中でひとり話すのだった。
「僕は外国を歩きながら、日本精神ということを絶えず考え通して来たがね、とどのつまりは、日本精神ということは、人を寛すということだと思ったね。それや怒るときは怒るがね、しかし、そこにまた何んというか、怒ってしまうと、ぱっと怒りを洗う精神が波うって来るそのおおらかな力だよ。それが日本精神さ。それが大和ごころという優雅な光りものだよ。もしそれが無ければ日本は闇だ。滅ぶ方がいい。諸君青年はこの美のために立てよ。ただそれだけがもう諸君の精神世界を美しくするのだ。そのどこにいったい嘘があるのか。」
 と東野は云うと眼に涙を泛べて矢代の膝を叩きつけた。矢代は強く打たれる膝も
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