今度こそはいよいよ東洋の海嘯《つなみ》だよ。僕らはうろうろしているときじゃない。」
興奮の去りかねた言葉だと分っていても、一同は東野に語を継ぐことも出来ずばったり黙ってしまったまま、一種異様なショックでそれぞれ下のタクシに乗り込んだ。
「久慈はどうしました。無事ですか。」と矢代は東野の横に乗ってから訊ねた。
「ああ、あれはまだ子供で困ったものだ、パリで逍遙していたよ。」
逍遙を子供の小さい用と訊いたものか塩野は突然おかしそうに笑い出した。東野はそれには少し困った表情になりかかったがすぐ加えた。
「しかし、僕はあの人ほどフランスを愛することの出来る人がいるんだと思うと、フランスが羨ましくなったね。僕はあの三分の一でも日本を愛してくれればなアと思ったが、愛というものは、こ奴はどうしょうもないものだ。そういうところがもしフランスにあるのなら、フランスだって少しは日本を愛してくれるだろうと、このごろ思い直しているんだが。――実際そうだよ。日本にラフカディオ・ヘルンがいたために、どんなに僕ら日本人はギリシア人に感謝したか思って見給え。」そして、東野は篠懸の街路樹の芽を噴き出している色を見ると
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