れた。自分に向けられる友情よりも由吉への深さが考えられた。
「もう皆さんそろそろ顕われるところだろう。」
矢代は千鶴子のこととなると話を反らして時計を見るのだった。
歩廊に出迎えの人人の賑い始めたころになって、外交官の速水や、音楽家の遊部など、矢代の顔見知りの人たちもぽつぽつ集った。由吉と千鶴子の来たのもそれから間もなくだった。由吉は矢代を見つけると、この度びだけはいつもの磊落な風貌を生真面目に押し包んで悔みをのべた。
「もうしかし、あなたもまたお出かけになるころでしょう。」と矢代は由吉の外国行きの準備を訊ねてみた。
「もうマロニエも、蕾をつけ始めましたからね。」
由吉はパイプを口から放して静に沖を見ながら、暫く微笑を湛えて黙っていた。マロニエが咲くという魅力は、一瞬、青春に翅を与えたような匂いを掠めて通り過ぎた。胸に息詰まるような甘さで迫る春の香だった。
「宇佐美、もう行くこと云うなよ。」と塩野も、噴きのぼって来るものの制しきれぬ興奮で顔が乱れた。
「なかなか鴎という奴は、なまめかしい容子をするもんだね。あの飛び立つところのしなやかさはどうだ。」と由吉は反転した他人事を呟き、
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