ら眼を灯台に放し、さみしく答えたものの、事実、自分は千鶴子の家のことに関しては、調査することもまだ進めず、またその用も感じたこともない自分だと思った。一つは怠慢とはいえ、それはむしろ、精しく知らぬ方が結果が良いと思っていたからでもある。千鶴子以外の他に誰かと結婚する意志でも起って来るようなときには、調査の上比較する必要も起るであろうが、そんな意志のない限り、知るより知らぬ方が便利でもあったし、知りたくとも耳を塞ぐ気持ちも良かった、またそれは、同時に自分の方についても同じだった。
「あの千鶴子さんはね、末っ子で、親からも兄弟からも可愛がられすぎるんだよ。そこがいつもすらすら通ることでも、結婚問題となると、反対にそれだけごつごつ難かしくなるんだね。何んでも侯爵夫人が間へ立っているとか僕は聞いたんだが、そういうことは、あそこのお袋は好きな人だよ。僕から見れば、今まで君が黙っているのはよく分るんだが、しかし、人には分らないからね。」
 矢代と千鶴子との間のことは、見て見ぬふりをしていた塩野も、それだけは遁さずに淡白さを装っていたのかと思うと、千鶴子の兄の由吉と彼との友情のふかさも矢代には考えら
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