さみたいなものは。」
見れば見るほど増して来る小舟の数を見詰めながら、矢代は云った。身動きして笑った佐佐の鋭い横顔に日が射し、鴎の描く白い速度に随って彼も視線を移していくばかりだった。鉛筆に似た、赤い灯台のある岬の先端を廻って入港して来る船、首の金具を鋭く耀かせて疾走する小蒸気、薄鼠色の船体を並べた外国船、浮標の間を巧みにあやつる櫓、荷上げ、荷卸しなど、窓の両側に映った船の景観は、矢代の通って来たどこの海路の港ともよく似ていた。
「皆さんはどなたも、もうお父さんがいらっしゃらないわけだなア。」
と、矢代は、世放れのした海から父の死を感じ、ふと塩野と佐佐との身の上のことも思い出したりした。今目前の景色も、父のいたときに眺めたなら、あるいは感慨も今とは少し違うのではなかろうかと思ったからだった。
「そうだね、君もとうとう僕らの仲間入りしたわけだよ。」と塩野は云って笑った。
「どうも僕は、何んだか少し、勝手がいつもと違うように思えるんだが。」
矢代はまたあたりの風景を眺めてみた。父のいるときには、自分の背後に父からの長い紐がついていて、そこから養分を吸い摂りつつ、それも知らずに迂濶に見
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