ちだった。
横浜の埠頭へ着いたときは、塩野はもう臨海食堂の窓際のテーブルで食事をしながら、画家の佐佐と話をしていた。矢代は塩野を後から肩を打ち、会葬の礼をのべてから彼の傍へ腰を降ろした。
「ここはなかなか眺めは良いね。」
「良いだろう。だから僕は早く来たんだよ。船の着くのは二時だとさ。あの船がそうなんだが、伝染病が出たとかで、昨夜からあそこに碇泊したきりだ。」
塩野の指差す沖を見ると、鉄壁のように並んだ幾つもの船舶の上から、一段高く白い頭を浮き上げた巨船が見えた。起重機や鉄板の間を幾百の鴎がしなやかに飛び流れていた。空が晴れているので波も蒼みを加え、照り返しの明るさに微笑が自然に泛んで来た。食堂は海中に突出した位置のため、船の食堂に出た航海の日の思い出を湧き立たせ、暫くの間も矢代は、もう忘れていた風景を限りなく思い出すのだった。
「ここなら二三時間待つのは愉しみだね。いろいろ君も、思い出すことがあるだろう。」
「もうたまらないんだよ。さきから。」
画家の佐佐も無言だった。つづく波の拡がる末の方から、肌を洗うように襲って来る哀愁に矢代も暫く黙っていた。
「何んだろうね、この妙な寂し
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